浅井工務店

コラム

新築土地活用

不動産賃貸業の事業継承③|自分の当然が他者(家族)の当然とは限らない!?

  事業継承

前回は、時代による「相続に関する考え方の相違」という観点からお話をしました。
今回は、家族であっても自分の考える当然が家族の当然とは限らなかった、という身につまされる相続の事例をご紹介させていただきます。

相続に限らず、他者が想定外の反応を示すことは、多々あるものです。
「言わなくてもわかっているよね?」のままで、本当に大丈夫なのでしょうか?
大事なことは早めに共有、書面化することの重要性を感じていただけると幸いです。

背景

先代は、多くの農地を所有。
土地区画整理事業で、その多くが宅地化。
それを機に不動産収入と相続対策を目的とした賃貸マンションを計画的に建設。

先代夫婦は、長男様夫婦と同居
家事は長男様の奥様が担当。
ご両親の送り迎えなども、献身的になさっていた。

先代はご高齢もあり、じきに施設に入所。
認知症の症状も進行しつつあった。
この頃から、長男様の妹様が頻繁に施設入所のお父様と会うようになる。

ある日、妹様主導で長男様には内密に、お父様に遺言状を書かせた。

長男様のお考え

自分たち夫婦は両親と同居し、家事や病院等の送り迎えも行うなど、老親を大切にしながら生活し、関係も良好であった。
また、自分は長男でありそれ相当の役割も果たしてきたし、これからもそのつもりだ。
だから、自分が多く資産を相続するのは当然だろう。

妹様のお考え

自分は嫁いだため同居はしていないが、両親の子どもだという点では何ら兄との違いはないはずだ。
また、両親と兄家族が同居しているため、遠慮はしつつも仲良く交流してきたつもりだ。
それを兄は理解していないと思うから、相続が兄の言いなりにならないように、父に遺言状をもって対処してもらうのは、当然の権利だ。

相続発生

長男様が知らない遺言状の存在が判明し、遺言状をめぐる争いに。

争点

遺言状作成時の認知症の度合い

結果

遺言状は有効(*)であると判断され、長男様の相続資産は自身が想定していた相続資産の半分以下となりました。
兄妹間の関係の悪化し、その後断絶状態となっています。
(*公証人による本人の認知能力確認はありますが、認知症初期は「まだら認知症状況」の場合が多いため、おそらく当日は正常な判断が出来ると判断されたのでしょう)

このトラブルを未然に防ぐ方策

●お元気な内に、相続人と被相続人が全員同席の時に資産継承方針をはっきり伝える。
●その内容を公正証書遺言として作成する。
●事業承継予定の相続人に家族信託により信託する。
●遺言状作成時から資産内容や家族の状況が大きく変化した時は、内容の見直しを行う。

この一連の流れに基づく作業は、やはり資産税に長けた税理士にお願いするのが得策と思います。

まとめ

いくら家族とはいえ、自分の当然が他者の当然とは限りません。それぞれの思いを汲む場を設けず資産配分などを決定してしまうのは、大変危険だということがよくわかる事例でした。
被相続人となられる方は、ご自分がお元気なうちに、相続人らとしっかりお話をなさっていただきたいと切に思います。

※次回は、不仲な兄弟が隣接した土地を相続したケースについてご紹介の予定です。

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